E子:あるの? 最近になって。
D子:あるよ。
A子:いつ?
D子:中学2年の時。
B子:どこで?
D子:卒業式の練習で。
C子;どんなふうに?
D子:前の授業のときからおしっこに行きたかったのだけど、すぐに卒業式の練習が始まってしまいました。わたしは椅子に座って、じいっと我慢していました。出口にぎゅうと力を入れて、拳を膝の上できつく握って。下を向いて、ただ耐えていました。もし、ぴょんぴょんと飛び跳ねることでも出来たなら、すこしは楽になったでしょうか。わたしはただ、座って、じいっと苦痛を味わうことしかできませんでした。在校生、起立。そんな声がして、周りがばたばた、立ち上がるのが分かりました。わたしもあわてて、立ち上がりました。お腹の中が、ふぅっと軽くなるような気がして、あっ、と思ったときには。
A子;先生! こっち!
B子:え? なに?
C子:漏らしたらしいよ?
A子:まじで? 有り得なくね?
B子;中学生でおもらし?
A子・B子・C子:おもらし?
D子:わたしは保健室に連れていかれました。連れていかれる途中、頭が真っ白になって、何度も倒れそうになったのを覚えています。いえ実際、倒れてしまったのです。気づいたときには、保健室のベッドの上でした。それも、ジャージ姿で。わたしは、もう死んでしまいたい、死んでしまいたいくらい、
A子:だが、死の淵を見た少女は、新たな次元へと覚醒する!
B子:決死の体験が、少女を未知の領域へと導く!
C子:そう、扉は開いたのだ!
A子・B子・C子:特殊性癖の扉が!!
D子:おもらし、最高!!!
E子:ありがとう。稽古再開していい?
A子・B子・C子・D子:すいませんでした。
E子:はい、じゃあ、このシーンの最初から。せーの、
A子:わたし、ちょっと、、、
暗転、E子にスポットライト
E子:わたしさ、おもらししちゃったんだよね。昨日。部活終わって、家、帰る時。稽古中から、トイレ行きたくって、稽古終わったら行こうって思ってたんだけど、あれこれやってるうちに、もう帰ろうってなって、じゃあ、一緒に帰ろうって。家まで我慢できるだろうって。でも、出来なかった。玄関が見えたら、おしっこ出ちゃった。じゃーって。自分でも信じられなくて。今でもまだ信じられなくて。わたし。
明転
はい、OK。今日の稽古はここまで。明日は次のシーンからやるから。一気に仕上げるよ。それじゃ、お疲れさまでした。
五人:お疲れさまでした!
B子、C子、D子、退場。
A子:トイレ行こ! ずっと我慢してたんだよね。
E子;あ、うん。わたしも。
A子:稽古中、いつも我慢してるでしょ。
E子:え。
A子:初めての演出だからって、そんなに気張らなくていいよ。トイレ行きたかったら、いつでも行って。ね?
E子:うん。ありがと。あのね、
A子:なに?
E子:わたし、昨日、、、
ゆっくりと暗転
終
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