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帰り支度をしていた保健室の先生は、りえこの姿を見るや、ブラウスとセーター、
それに、長めのスカートとキャミソールと下着、そしてバスタオルを用意してくれた。
こんなに用意してあるんだ。わたしみたいな子、ほかにもいるのかな。
白い布で仕切られたベッドのある場所で、着替える。
濡れたスパッツが肌に張り付いて脱ぎにくい。ぽたぽた、脱いだ拍子に、また滴が落ちた。
におったらどうしよう、あわててバスタオルで拭こうとして、だめじゃん、借り物だし、
カットソーの濡れていない部分で拭く。
キャミソール、カップのついていないタイプ。そうですよね、どうせ胸ないですから。
「あ、濡れた衣類、これに入れてね」
白い布の隙間から、ビニール袋と、ピンク色のナイロンバックが差し出された。
ありがとうございます。
着換えを済ませて、荷物を持って、保健室を出ると、りんちゃんがわたしの鞄を持って、待っていてくれた。
りんちゃんは、あんまり表情がない。いつも同じ顔をしている。
体格も、目も大きくて、ショートカットが似合う。
やせっぽちで、目が小さくて、癖っ毛のわたしとは正反対な気がする。
りんちゃんは、わたしのいつもわたしのはなしを聞いてくれる。それで、変なことですごくおどろく。
わたしは、りんちゃんをおどろかせるのが少し好きだったりする。
りんちゃんはいつもと同じ顔で、大丈夫? と、聞いた。
わたしは、うん、ありがと。と答えて、笑って見せた。
そしたら、りんちゃんも笑ってくれた。
外はもう真っ暗で、廊下の蛍光灯がやけに眩しかった。
「教室、もう誰もいない?」
「うん。でも、すがちゃん、こぉちゃん、きみちゃんとさいちゃんが怒られてるよ」
え。
「ペットボトルとか、手鏡とか、先生に見つかってさ」
そっか。
「りんちゃん、菅原さんとか、まだ教室にいるかな」
「うん、たぶん」
「わたし、4人待ってる」
「え? 珍しいじゃん、りーこ、あんまり話さないのに」
りんちゃんが大きな目をさらに大きくする。
「さっき、小牧さんとか、助けてもらったから」
「りーこが行きたいなら、いってくれば」
「うん、りんちゃん、さき帰っててよ」
「やだ、暗いからひとりで帰りたくない」
「でも、遅くなっちゃうよ」
「いいよ」
「ありがと」
クラスメイトって面白いって思う。そりゃあ、カチンとくることもたくさんあるけれど。
でも最後には、このクラスでよかった、このクラスのみんなとあえて良かった、って、思えるんだ。
でも、できればもうちょっと、合唱に積極的なクラスがよかった、な。
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