―7―
 それから少しして、ひーちゃんが来た。
わたしはあわてて服を着て、玄関へ走った。
 ひーちゃんは置きっぱなしにされたわたしの荷物と、クリスマスプレゼントを持ってきてくれた。
「大丈夫? みんな、ほんとに気付いてないから。わたしも、気にしてないし」
 しゃべりながら、ひーちゃんのあたまが小刻みに左右に揺れている。
「ありがとね、わたしも、たぶん、大丈夫」
 ありがと、ほんとに。隠してくれて。
「服、いつ返してくれてもいいからね」
「ありがと。でも、ほんとにごめん! ひーちゃんち、よごしちゃった」
やばい、また泣きそうだ。
「だから気にしてないって! ね?」
 ひーちゃんは泣きそうなわたしに気付いたんだろう。ぴょんぴょん飛び跳ねるように話をする。
 別に、ひーちゃんに元気アピールをしようと思ったわけではないんだけど、そうだ、いいこと思いついた。
「みんなで初詣いこうよ!」
「え?」
 声が大きかったからかもしれないけど、ぴた、びっくりしたひーちゃんが止まる。
「今度はわたしが声かけるよ! 今日はみんなに迷惑かけちゃったし。もちろん、しょうたくんも呼んじゃうよ!」
「うん! やっぱりあおっちはそうじゃなきゃ!」
「なにそれ」
「考えるより先にからだが動く方でしょ!」
「えへへ、ばれたか」
 玄関先の白熱灯の下。もうすっかり夜で、でもひんやりした空気は、ちょっと気持ち良かった。
「あ、でも初詣って、ぜったいトイレ混むよね。気を付けなきゃ!」
わたしは顔をしかめて言った。
 ひーちゃんは、ぱち、目を開いて止まったあと、声を出して笑った。




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