中学1年生 1月
 これ、たぶん中学でいちばん恥ずかしかった思い出です。ほんと、いま思い出しても恥ずかしいです。
 1月のまん中くらいだったかなー。普通に学校行って、普通に授業受けてたんですけど。なんか寒気がするなー、って。なんかとにかく寒くて。すごい気持ち悪い、とかじゃなかったんですけど。そしたら、1時間目だったかな、先生が「お前、顔が赤いぞ、熱ないか?」って聞いてきて。あ、そうですか? とか答えたかな。そのときはほんと、ぜんぜん気持ち悪いとかじゃなかったんです。でも、念のため保健室行け、って言われて。
 保健室でお熱計ってもらったら、37度とかで。気分悪いんなら、少し休んでく? って、保健室の先生に言われて。言われてみたらなんか気持ち悪いなー、って。じゃあ、少し休ませてもらいます、って言ったら、ベッドに案内されて。たぶん、もうかなり体調悪かったんだと思います。ベッド入って、直後に寝てましたね。
 普段だったら気づくんですよ。学校で寝たらやばいって。でもこのときは思いつかなかったですね。やっぱり体調悪かった。
 もう最悪です。気づいたら、びしょびしょでした。あれ、ここ家だっけ、おねしょしちゃってるし、みたいな。気づく順番逆だろ! って。それから、ここ保健室だって思ったら、もうほんと、あたまぐるぐるでした。
 なんて言おう、どうしよう、すごいパニックなのに、冷静に考えてるっていうか。さすがのみはるも、保健室でおねしょしちゃったのは初めてだったんですよ。もうベッドに中で完全に固まってましたね。しかも、他の生徒の声とかするんです。怪我しちゃってー、とか。うわーもうどうしよー、息を殺す、って、こういう感じ言うんですよね。
 そのうち冷たくなるし、すごい寒いし、気持ちも悪くなってきて。で、他の生徒いなくなった瞬間、「先生ぇ!」って、たぶん叫んでました。すごい涙声だった気がします。
 どうしたの? って先生来てくれて。まず、顔色悪いから熱計りましょう、って言われて。計ったら39度とかだったんです。あ、これインフルエンザかも、このまま帰りなさい、って。でも、このままじゃ帰れないんです、って言ったかな。もう、素直に言うしかない、って、「おしっこしちゃいました」って。泣いてました、かんぺき。
 先生、わ、大変! ちょっと待ってて、って出て行って。水の音とか、がたがた言う音とか聞こえて、五分くらいだったかな、着替えとか持ってきてくれて。ひとりで起きられる? わたし隣にいるから、何かあったら声かけて、って言ってくれて。
 起きあがったらすごい頭がんがんして。なんか、腕の付け根とかすごい痛くて。でもそれ以上に、制服背中のほうまでびっしょりで、もちろんスカートもびしょびしょ。ちらって見たら、ベッドにもすごい大きな染みできてて、やっぱりショックでした。また涙止まらなくなっちゃって。
 下着からジャージからぜんぶ先生が用意してくれてて、あ、あと、あったかいタオル。からだ拭いて、着替えたんですけど、ほんとふわふわした感じで。もしかしたら、まだ夢なのかな、って思うくらい。だって、保健室で全裸ですよ。みはるいったい何をやってるんだろう、みたいな。
 濡れた制服は用意してもらった大きなビニール袋に入れました。ぜんぶ着替えたのなんて、小学校低学年以来でしたね。
 着替えてる間に担任に電話してくれてたのかな。だれかが鞄とかコートとか、みはるの荷物、保健室まで届けててくれて。先生、このまま帰りなさい、貸した衣類は洗濯しなくていいから、そのまま返してね、って言ってくれて。あと、なるべく早く病院に行くのよ、って。
 ふらふらしててよく覚えてないんですけど、みはる、ずっと泣いてた気がします。
 それで、なんですけど。この日の事件はこれだけじゃ終わらなかったんです。
 



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