ー7ー
「僕、タオル返してくるよ、早くしないと、先生帰っちゃうから」
ぱっ、バスタオルを2枚、取りあげると、彼はまた、プールの方へと駆けだした。
その後ろ姿が見えなくなって、あすの、はぽつり、口を開いた。
「みさきちゃん」
「なに?」
「福田さんと待ち合わせしてたの?」
どん、さっきの雷みたいに、心臓がなる。
「うん、迎えに来てもらった」
うつむいて、彼女は答える。雨の音に消え入りそうな声。
「仲良しなんだ」
わたし、いじわるかな。
「誰にも言わない?」
言わないし、聞きたくもないけれど。うん。
「福田さんと、カレカノなの」
だよね。わたし、大当たり。
「ちょっと前から、だけど」
もう言わないで、聞きたくないから。
「わたしも、福田さんのこと、好きだったんだけどなぁ」
「えっ」
ぽかん、みさきちゃんがわたしを見る。言わないでおこう、って思ったのに。やっぱりわたし、いじわるかな。
「ぜんぜん、知らなかった」
隠すの上手ですから。おもらしだって隠しちゃう。
「その、ごめんなさい」
みさきちゃんが小さくなっている。
「これですっきりしたからいいよ。また、あたらしい人探すから」
「ありがと、ごめんね、あすのちゃん」
泣かないでよ! 泣きたいの、わたしなんだから。
「雨、上がったね」
福田さんが戻ってくる。
「何か、あった?」
みさきちゃんの様子を見て、眉を寄せた。すいません、わたしが泣かしました。
「なんでもないです、女の子同士のはなしです」
にこ、きっと作り笑い。わたしも、にこ。笑えてるかな。
「行こっか! 早く着替えないと、風邪引いちゃう!」
「そうだね。ふたりとも、お疲れさまでした。次の予定は、天気を見て決めましょう」
「はい!」
「晴れたねー、暑くなりそう」
「布団、乾くかな」
「布団?」
「あっ、なんでもないです!」
真夏の雨が、足ばやに過ぎていく。わたしの気持ちはまだ晴れそうにないけれど、雨上がりの空には、虹がかかるって。きっと。
|