『W.N.P.〜winter〜』
−1−
わたし、倉田えみり。現役ばりばりのJK2。え? 現役ばりばり、って言わない? じゃあなんて言うの? ピチピチの? それ魚か。知らんけど。
お話を始めるまえに、二つ、わたしのこと言ってもいい?
ひとつは、わたし、帰国子女なの。中学までイギリスにいて、だから、いちおう英語は話せる。逆に言えば、日本語の方が苦手。ヘンなこと言ってたら教えてね、もっともっと日本語も話せるようになりたいから。
もうひとつは、これはほんとは恥ずかしいことだけど、隠してたら、このお話ができなくなっちゃうから、言うね。わたし、夜尿症なの。そう、おねしょするの。
高校2年生でおねしょ。びっくりした? 大丈夫、引いてない? もう生まれたときからずっとなんだ。眠るとおしっこが出ちゃう。寝てるんだから自分では気づかないんだもん。どうしようもないじゃない? ベッドは濡らしたら本当に大変だから、寝るときはいつもおむつ。それが当たり前だったし、いまでも当たり前だって思ってる。
でも、わたしみたいな夜尿症の子、出会ったことがなくて、どうしてわたしだけしちゃうんだろう、って悩んだこともあって、やっぱり、苦しかった。でもね、夜尿症だったから、きっとだれも体験したことがないような、あの日の奇跡に巡り合えたんだと思う。
奇跡って何? 気になった? 聞いてね。それは、とても素敵な奇跡の出会い。偶然集まった、歳も近い4人の女の子が、なんと4人とも夜尿症だったの! こんなこと、信じられる?
4人っていうのは、わたしと、まず、澤田じゅりあちゃん。いっこ下だけどすっごくお姉さんな感じで、笑顔がとってもまぶしい、太陽みたいな子。
それから、横溝なおみちゃん、JC2。知的な美人さんで、とってもクール。でも、心の中はすっごく情熱的。
そして、花園あんなちゃん、JS5。かわいいみんなの妹分、って感じだけど、実はしっかりもので、意外なことにホラーが大好き!
3人とも帰国子女で、わたしたちがおしゃべりするときはいつも英語。本当に偶然、わたしたちは出会って、そして4人とも夜尿症だって分かったとき、わたしがどれだけ興奮したか、この奇跡に感謝したか、想像してみて? 本当に心臓が一回転したかと思った!
それでね、この4人なら、今までできなかったあることに挑戦できる、ってわたし思ったの。それは、お泊りパーティ。
どうしても恥ずかしくて、今までのお友達に言えなかった夜尿症。だから、お友達とお泊りってしたことがなくて。きっと、これからも出来ないんじゃないかって思ってた。
でも、全員夜尿症なら、何も気にすることないじゃない? そりゃあ、恥ずかしいけど、でも、わたしだけ、って思わなくてよくて、それは、すごく気持ちが楽で。
夏休み、うちの別荘でお泊り会をした。お庭でバーベキューをして、ホラー映画を見て(見たくなかったけど!)、布団の中でいっぱいおしゃべりして、順番に洗濯して。楽しかったぁ! 今度は冬、また泊まりに来ようねって、約束したんだ。
と言うわけで、お待たせしました! わたしたち4人のワンダフル・ナイト・パーティ、冬編のはじまりです!
|