―2―
「プレゼント交換、しよっか!」
 おしゃべりもひと段落ついたころ、ひーちゃんが切り出した。クリスマスパーティらしい、唯一のイベントです。みんながごそごそ、荷物を取り出す。
「時計まわりで回して、この曲が終わったとこでストップね!」
はーい。
 プレゼントが回り始める。どきどきする。ジュース飲み過ぎたかな、ちょっとおしっこに行きたかったけど、忘れてしまった。
 くるくる。プレゼントが手渡される。ちらっと見えたしょうたくんのプレゼント、青くて小さい包み。いま隣の隣、それから隣、よし、わたし、あ、だめか。もう一周する? あと4人、3人、隣の隣、あ、終わった。
「はーい、そこまで!」
 お前のでかいじゃん、おれ超軽いんだけど! 男子が口々に言う。あ、しょうたくんが持ってるの、わたしのだ。
「みんな開けてみようよ! じゃあまず、あおっちから!」
四角い箱。包みを開ける。小さなゆきだるまの置きもの。
「えー、かわいいじゃん。これは誰からですかー!?」
ひーちゃんが声をかける。
「わたしです、かわいいでしょ?」
ゆうなちゃんのだ。こういうとこセンスいいよね。
「じゃあ次、ゆうなちゃん開けてー」
 それ、しょうたくんの。
青い包みが開かれる。なんだろ。小さな鳥、たぶんアヒル? のぬいぐるみ。えぇ、かわいい。
「これは誰から?」
「おれ」
しょうたくんがはにかむ。
「ええ、しょうたァ? 似合わないんだけどォ」
ゆうなちゃん。わたしもそう思う。
「押してみ?」
 しょうたくんがいたずらっぽく笑う。あ、この顔、好き。好きって思って、なんだかひとりで恥ずかしくなった。
 ゆうなちゃんが両側からつまむように持つ。ぐぇぇぇぇ、アヒルが鳴いた。何このきもい声! しょうたくんがけらけら笑っている。やっぱりしょうたくんだ。
「ちょっとなにそれ、趣味わるぅい!」
言葉が、勝手に出ていた。しょうたくんに話しかけたの、久しぶりな気がした。
「どんどん行くよー。じゃあ次、しょうた!」
どきん。
 わたしのプレゼントだ。どんな顔するかな。喜んでくれるかな。
ひっぱるように袋を開ける。中身は水色のハンカチ。知ってる、しょうたくん、ハンカチいつも持ってないよね。そんなことを考えながら買った。もちろん、誰に当たってもいいように、無難なハンカチだけど。
「あー、りがとぉ」
 微妙な顔。そうだよね。ハンカチ、使わないよね。分かってたのに。しょうたくんの人形の鳴き声で、わぁって盛り上がってたのに、ハンカチで、なんかみんなちょっと引いちゃった気がして。きゅう、胸が苦しかった。
「これは誰の?」
ひーちゃんの声。言葉がつまる。
「あ、わたし!」
沈黙が嫌で、無理に片手をあげて、声を出す。
「あぁ、ありがと」
 しょうたくんがこっちを見る。にっこり笑ってくれる。やっぱり、優しいな。
「いらなかったら返してくれてもいいんだけど」
口から正反対の言葉が飛び出す。
「いいよ、もらうよ」
 よかった、返すって言われたらどうしようかと思った。しょうたくんのほうが大人かも知れない。




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