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田舎の家。天井が高い。ほこりっぽい。でも、窓が多くて、明るくて。ひかりが差しているところに、ほこりなんだけど、空気が動くと、きらきらひかって見えて、ちょっときれいだと思ったりする。うちはマンションで、おしゃれだけど、もっと暗い。
「ねぇちゃん、これ知ってる?」
りょうくんが、本を持って隣に座る。なにかのキャラクターの本。
「あ、知ってるよ。流行ってるんでしょ?」
「ねぇちゃん、どれが好き?」
「これ? この赤いの」
「ええ、これ弱いんだよ。おれね、こっち、ちょうのうりょくタイプ」
「へぇ、そうなんだ」
おれ、の発音、れ、が下がるところが、子供らしいというか、かわいいというか。一方的に話しかけてくるけれど、別に、いっしょに遊んでとか、なにかやってとか、要求してくることはなくて、うん、そうだね、って聞いている。そうこうしていると、お祖父ちゃんが畑から帰ってきて。学校の話とか、すこしして。
夕方、おばちゃんが帰ってきて、5人で晩ご飯を食べて。おじちゃんが帰ってくるのは遅いんだって。まったくお盆さまだって言うのにうちの子は2人とも、なんてお祖母ちゃん。ゆきちゃんが代表して来てくれたもんな、ってお祖父ちゃん。
7時半、もうすぐお風呂、って話してたら。
「おれ、花火したい」
って、りょうくん。
「お母さん忙しいから、明日にしなさい」
って、おばちゃん。
「じゃ、わたしとする?」
「うん、する!」
「でも」
「大丈夫だよね、りょうくん」
「うん」
「大丈夫かしら、子供だけで」
「大丈夫だろ、ゆきちゃんはもう中学生なんだから」
「虫よけ、つけて行きなさいね、すぐ蚊に食われるから」
ぷしゅう。スプレー。デニム地のショートパンツから下。それど、ピンクのTシャツ、白の飾りレースがついている。腕にも。しゅうしゅう。ひんやりする。
「りょうくん、お出かけの前にトイレ行っておくのよ」
「はーい」
「じゃあこれ、ライターとろうそく。バケツは、玄関にあると思うから」
「ねぇちゃん、行こ!」
キャラクターものの花火のパックを抱えて、りょうくんが飛んできた。
じゃあ、ちょっと行ってきます。
「りょうくん、お水、どこで組めばいい?」
まだほんの少し、むらさき色の残る空。ずいぶん少なくなったけれど、蝉の声が聞こえる。風がない。花火はしやすいだろう。ゆきのはバケツを片手に提げて、蛇口を探した。
「ねぇちゃん、お水はいつも向こうでだよ」
「向こう?」
りょうくんはとん、と靴を履いて、道路へと走る。飛び出さないで、なんて心配しながら、ゆきのは後をついて行く。あれ、花火って、お庭でするんじゃないの?
「庭、せまいからだめだって。近くの神社まで行くんだ」
そうなんだ。
「ねぇちゃん、こっち」
半ば駆け足で、りょうくん。ちょこちょこ走って、止まる。結局、普通に歩いているわたしと、あまり速度が変わらない気がする。
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