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「それでは、よろしくお願いします」
 監視員、と書かれた札を手渡されて、他のお母さんたちが首から下げて、みくもそれに倣った。
 サンダルを脱いで、プールサイドに向かう。
 じりじり、足元が熱い。小学校のプール、こんなに狭かったっけ。泳ぎがあまり得意でない彼女にとって、とてつもなく広く、深く感じていたけれど、中学の屋内プールを見てしまうと、なんだか可愛らしいくらいの大きさに思える。
「篠田さん、お母さんの替わり? 偉いわね」
 監視員さんのひとりに声をかけられる。ええと、誰だっけ。顔は知っている。
「あ、はい。よろしくお願いします」
 頭を下げる。
「暑いからねー、熱中症に気をつけるのよ。お水、しっかり飲んでね」
 いちおう、ペットボトルを持ってきた。
 けど、出来ればあまり飲みたくない。トイレ行きたくなっちゃうから。
「監視員のみなさんはプールの四隅に立って下さい」
 陽ざし強いね、立ってなきゃだめ? ひそひそ、そんな声が聞こえて、みくはちらっと先生の顔を見てから、こばしりに、入り口からいちばん遠い隅に向かった。暑さのせいもあるのか、息が上がる。すぅはぁ。

 子供たち、みんな楽しそうに遊んでいる。
 知っている顔もずいぶんある。後輩たち。ときどき、手を振ってくれる子がいる。みくも笑顔で手を振る。ぎらぎら、太陽の光が落ちてきて、プールの水は青くてきれい。頭が熱い、帽子、持ってくればよかったかな。
 上は白いカットソー、下は小花柄ののショートパンツ。黄色がメイン。日焼け止めを念入りに塗ってきたけれど、半日立っていたら焼けちゃうだろうな。焼けると痛いんだ。もともと色は白いほうで、日焼けと言っても真っ赤になって、1週間くらいで元に戻る。でもその間がね、ひりひり、お風呂に入るのもいやになるくらい。
「篠田さん、久しぶり、すっかりお姉さんになって」
 あ、先生。お久しぶりです。
「たかあき君の面倒見に来たの? 偉いじゃん」
 まぁ、親の頼みですけど。
「ほんと、熱中症には気をつけてね、ちゃんと水分取ってね。飲み物、持ってる?」
 あ、はい。
 なんだか、先生の目が、水を飲め、と言っているようで、みくは斜めがけしたボディバッグからペットボトルを取り出して、封を切ると、口に運んだ。一口くらいなら大丈夫、こく、のどを過ぎる水はおいしかったけれど、飲み過ぎないように、注意。
「12時までだから、よろしくね」
 あと1時間半。家を出る前にトイレに行ったから、大丈夫。お水さえ飲みすぎなければ、行かなくても平気。
 わたし、お姉さんだし。いちおう監視員役だから。自分より年下の子がいっぱいいるなかでトイレに行くのは、何となく恥ずかしい。1時間半、平気、へいき。



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