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もちろん、おむつ着用でしたよ。自分の家だし、たぶん平気だろうって思ってたけど、やっぱり、万が一があったら、恥ずかしいから。
1時間くらいしたときかな、あ、って。
彼、30分おきくらいで、休憩しなくて平気? とか聞いてくれてたんですけど、はい、大丈夫です、って、言っちゃって。
言えないものですね、おトイレって。なんだろ、やっぱり、恥ずかしかった。初対面の男のひとに、おトイレって。意識しちゃだめ、ひとこと言えばいいだけだから、って、あたまではすごい思うんですけど、なんてぃうか、切り出すタイミングが分からなかった感じで。
それで、あああもぉ限界って。じたばた我慢して気付かれちゃうより、思い切ってしちゃったほうがいいやって思って、なんか、言いわけみたいですけど。
彼のとなりで、やっちゃいました。
机に両肘ついて、体重乗せて、おしり、少しだけ浮かして。この体勢ならたぶん気付かれないだろうって。この時はもう、それしか考えられなかったです。今しちゃおう、って。おトイレに行くっていう選択肢が浮かばないって言う。笑わないで下さいよ、ほんとに、それしか考えられなかったんです。
前、学校のテスト中にしちゃった事があって、そのときも心臓がめちゃくちゃ早くなるの分かったんですけど、この時もそんな感じでしたね。しゃああ、って出始めてからはもう、早く終わって! って。おむつの中あったかくなって、だんだん広がって。吸収体がふくらむのが分かるんですよ。すごいすごい長い時間に感じるんですよね。終わるまで。
終わってから30秒くらいかな、ずっと腰浮かしてて。座った時の、ぐにゃっ、って感じ。逆に今度は心臓止まりそうな感じで。服まで漏れてたらどうしよう、って。
服装ですか? スウェットのパンツに、トレーナーワンピだったかな。もろ部屋着、って感じの。とにかく、おしり隠せるのが良かったから。おむつしてるとどうしてもふくらんじゃうし、あと、もしおまたまで濡れちゃったら、隠せるのがいいから。席立ったときにそっとおしり触って、良かった、濡れてない、って、ひと安心でした。
そうして、家庭教師初日は終わり、ではまた来週、よろしくお願いします、そんなことを言った。
彼女はにっこり笑顔を見せて、青年を送る。笑うと、お母さんにそっくりですね、素直な感想を口に出そうと思ったけれど、なんとなく、やめた。
二回目、三回目と回数を重ね、やはりさしたる問題もなく、こんなお店があってね、コーヒーが美味しいんですよね、へえ、行ってみたいですぅ、そんな話を合間にするようになって、街路樹がすっかり葉を落とすころには、青年には年の離れた妹ができたような、そうだ、今度お母さんと3人でコーヒーを飲みに行きましょうか、何気なく、口にした。
「あ、はい、先生とだったら、楽しいかも」
彼女は少しうつむき加減に、小声で、そう、答えた。
たぶん、二回目かな、三回目かな、それくらいにはもう、彼のこと、好きになってたんだと思います。来週はどんな話しするのかなー、とか、早く来ないかなー、とか、そんなこと考えてました。
もしかしたら、はじめて会ったときから好きだったのかもしれない。一目ぼれ、ですかね? わー恥ずかしい。
でも、彼のこと考えてどきどきしてる自分がいて、ふたりでお出かけとかできたら楽しいだろうなーって、思ったりして、けど、その、やっぱりからだの事があるじゃないですか。だって、おしっこの我慢できない女の子と、いつおもらししちゃうか分からない女の子と、一緒に出かけたいって、ふつぅ思わないですよね?
確か、このときもおもらししちゃってたと思います。やっぱり、おトイレって言えなくて。辛かったー。言えないのも辛いけど、言って、変な目で見られたらどぉしよぉ、って。嫌われたくなくて。辛かったです、うん。
でも、いや、だからかな、言いたかったんですよね、たぶん、ほんとは。好きな人に、自分のこと、知ってほしいって、たぶん思ってたんです。だからかな。
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