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 ひょっとしてわたし、すごいおしっこくさい?
 首だけ動かして、辺りを伺う。子供たちは相変わらず走り回っている。まさか、誰も気づいてないよね?
 でも。
 じっとしてると、すごく、おしっこのにおい。
 脚を組む。
 脚の形になるスカート。大丈夫、濡れてはいない。またもぞもぞ。
 お腹が空きすぎて、気持ちわるい。
 喉が、すごく乾く。
 遊具から少し離れたところに、水道がある。お水飲みたい。でも、やっぱり、立てない。
 右側、向こうの道路。ランドセルの子たちが、通り始める。時計を見ると、もうすぐ3時だ。あと1時間で、妹が帰ってくる。妹も、この道を通るはずだ。そしたらわたしも、家に入れる。
 すぐに、シャワーを浴びよう。今日は暑かったから、って言えば不自然じゃないだろう。
 こっそり、替えの下着を持って行こう。それで、シャワーと一緒に、おもらしぱんつは洗っちゃう。
 それからお昼を食べよう。なんで今頃、って聞かれたら、学校で勉強してたの、って、言う。
 にぎやかな小学生の列。黄色い帽子が視界のはしを流れていく。
 あの子たちは、おもらし、するかな。なんて。以下割愛。
 あと、30分。陽ざしはずいぶん穏やかになったけれど、暑いことにかわりはない。
 幼稚園児の数は減り、かわりに、小学生の子たちがかわるがわる、やってくる。
 わたしもこないだまで、そうだった。学校が終わると、ランドセルを放り出して、ここで日が暮れるまで、遊んだ。
 だんだん、大きい子たちが増えてくる。広場で、走り回ったり、ボール遊びをしたり。妹ももうすぐ帰ってくるだろう。今のうちに、家に帰って、妹を待った方がいいだろうか。
「あ、あっちゃんだ!」
 大声に、呼び止められる。
 背後から何人かが、駆けよってくる。知っている顔。よく一緒に遊んだ、年下の女の子たちだ。
「学校、もう終ったんですか?」
「制服、かっこいい!」
 あっという間にまわりを取り囲まれて、口々に、そんなことを言われる。
 どっ、どっ、どっ、どっ。心臓が暴れる。彼女たちの視線が行き来するスカートの下、わたしは、決して知られてはならないひみつを隠している。
「今日はテストだったんだ」
 つとめて笑顔で、言う。
「へー、何して遊ぶ?」
 彼女たちはもう、次の話題に進んでいる。良かった、そのまま通りすぎて下さい。
「あっちゃんも一緒に遊ばない?」
「わたし、これから勉強しないといけないんだ」
「へー、中学生って、大変!」
「じゃ、わたし行くね」
 立ち上がろうとして、がぁん、あたまを上から叩かれるような、衝撃。
 わたしが席を立てば、きっとその下には、決して見られてはいけない染みが残っている。
 鋭い子は、においに気付くかもしれない。

あっちゃん、もしかして、おもらし?

 聞こえるはずのない、しかし、わたしが席を立てば、おそらく聞こえる、声。
 どうしよう、わたし、帰れない!



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